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1,400年前の古代から声が聞こえてくる。
金鈴塚古墳から見えてきた木更津のロマン。
木更津市長須賀。ここに、古代の時間を閉じ込め、その空気とロマンをそっと現代に伝えるひとつの空間がある。木更津の港へと続く通りから一本北側の細い道を歩くと、そこに小さな丘が見えてくる。金鈴塚古墳だ。整えられた石段を上る途中、そこにある空気が少しずつ古代のそれへと移ってゆくそんな感覚が伝わってきた。そうなのだ。ここには、千数百年前に営まれていた人々の暮らしとそこにあふれていた思いが凝縮されているのだ。耳をすませば、当時の人々の声が聞こえてきた。目を閉じれば、当時の人々の心が見えてきた。その扉を開けた瞬間、時間は古代へと巻き戻されていた。
―――「1、500年前の謎を解く二子塚から朝鮮鉄器文化。古代刀・人骨出土」。昭和25年4月、新聞はひとつの発見を伝えた。すでに墳丘の大部分が失われ、後円部と前方部のごく一部を残すだけだったこの前方後円墳「二子塚」の発掘調査により、古代の木更津の様子が浮かび上がってきた。そして、8月、 石室の中から金の鈴が出土。共に出土した金糸によって腰飾りとして使用されていたと推測されているこの「金の鈴」の名を冠して「金鈴塚古墳」と呼ばれるようになったのだ。発掘当時、この金の鈴がすずやかな音で鳴ったという感動は、今もなお語り継がれている。古代の人々が作りあげた鈴は、一体、当時のこの地にどんなロマンあふれる音色を響かせていたのだろうか。5世紀中期から7世紀初期にかけて造られた前方後円墳や円墳が点在する祇園・長須賀古墳群のひとつであるここ金鈴塚古墳では、全国的にも貴重ですぐれた副葬品が発見されていることから、この地域には当時日本各地で使用されていた豪華な品物を墓まで持ち込むだけの有力な豪族のような人物が存在していたのではないかと考えられている。では、その「すぐれた副葬品」とはどんなものなのか。例えば、青銅鏡、玉類、金環などの装身具。実用されていたものか、死者を飾るものかは確かでないものの、「銅製品で飾ること=力を誇示すること」と考えられていた時代の金鈴塚古墳からも冠の前立てに使われた可能性のある金銅透彫金具等が出土している。そして、さらに、この金鈴塚古墳のロマンを語るにあたり、「飾り大刀」の歴史にも触れておかなければならない。飾り大刀とは、金属製の柄頭(つかがしら)を持ち金銅板などで柄や鞘を包んだ装飾付大刀のことで、柄頭の環頭内部に「鳳凰」や「龍」などの文様が装飾されている。本来は中国や朝鮮半島の「飾り大刀」で、当時は輸入されたものが多く、その後、先端が弧状または山型になっている「圭頭(けいとう)」、鶏のトサカのような飾りを持つ「鶏冠頭(けいかんとう)」など日本国独自の大刀も作られるようになったとされている。また、金鈴塚古墳の年代の推察の手がかりとなるもののひとつとして「須恵器」の存在がある。これは、5世紀に朝鮮半島からその製法が伝えられたもので、非常に硬く焼き締まっていることが特長。金鈴塚古墳の須恵器で圧倒的に多いのは脚のついた「高坏(たかつき)」と呼ばれる器と言われている。日本の古墳時代の須恵器の高坏で二方に「透かし」といわれる飾りを持つものは、6世紀末の限られた時期に作られていたことから、金鈴塚古墳の年代を推察する決め手となっている。
では、一体、6世紀末から7世紀前半の日本はどんな様子だったのだろうか。
刀柄頭の環頭内部の文様によりその時代を推測
することが可能になる。龍が向かい合って、二匹
ずつ入れられているものは、双龍環頭大刀(そうりゅうかんとうのたち・写真)。
金鈴
大きさ約1cm、重さ約1.25g。高い純度の金を使用
して作られた鈴は全部で5つ出土した。上と下を
別々に作りロウ付けをし、鈴子には石を利用して
いたとされる。
銅鏡
かつては政治的連帯の証として日本人に好まれ
た鏡も古墳時代後期にはその役目を終えた。
その後も、愛着は強く、金鈴塚古墳からは「変形
神獣鏡(へんけいしんじゅうきょう)」と「変形珠文
鏡(へんけいしゅもんきょう)」が出土した。
古代の木更津から少し視野を広げて古代の日本を見てみたい。604年、十七条憲法制定。645年、大化の改新…聖徳太子や蘇我馬子が駆け巡っていたまさにその時代ということになる。想像してみてほしい。これは感動という言葉を何度繰り返しても表現できない程の壮大なロマンと言えないだろうか。中央では、その後の歴史を動かす人物たちが活躍していた時代、旧海道のルートをたどり東京湾を渡った場所、つまり古代の交通の要衝にあたる木更津は、畿内王権の東国支配にとって極めて重要な地域として考えられていたということになるのではないだろうか。古代、木更津、金鈴塚古墳、時代はここにも風を起こしていたのだろう。
―――時代が巻き戻されるその瞬間、現在の金鈴塚古墳の鉄製の格子がゆっくりと開いた。冷たい空気を感じた。古代の時代からそこを流れていた空気を感じた。石を重ね、時を重ねて作られた横穴式石室には、少なくとも3人の被葬者が葬られていたという。その古代の時間とロマンをいつまでも守り続ける金鈴塚古墳を前に、しばらく時間が止まっていた。古代から届いた時代の声はこれからもずっと続いてゆく。
(文・宮城 亮/提供・情報採載)
木更津市立金鈴塚遺物保存館
木更津市太田2-16-1
TEL.0438-22-3676
開館時間 AM9:00~PM4:30
観 覧 料 無料(特別展は有料)
休 館 日 月曜日の午後・火曜日・祝日の翌日
※展示替え等のため臨時休館することがあります。
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